脳振とうについて
スポーツの中でも、ラグビー、アメリカンフットボール、ボクシング、柔道など衝突を伴うものは、頭部外傷のリスクが高くなります。スキーやスノーボードで転倒して頭を強く打つこともあります。
多くは軽症ですが、脳損傷や頭蓋内出血など意識障害をきたしてときに命を失ったり後遺症が残る重症例もあります。また、頭を打った当初はなんともなく、しばらくしてから、長い場合には1~3ヵ月かけて出血が進むこともあります。
脳振とうは、明らかな骨折や出血がなくても、頭部への衝撃により脳に「ゆがみ」が生じて、一時的に意識を失ったり、頭を打った前後のことを覚えていなかったりする状態です。
脳振とうが疑われる場合には、直ちに競技を止めて専門医による評価を受ける必要があります。夕方や週末に病院を受診すると専門医がいない場合もありますが、ひとりで過ごすことは避け、週明けには必ず専門医に診てもらいましょう。
競技、練習への復帰についても専門医による慎重な判断が必要です。一度脳振とうを起こすと数週間は2度目の脳振とうが起こりやすい状態になっているうえに、もし1度目の衝突の際に脳の血管がわずかに損傷を受けていると2度目の衝突で致命的な脳出血が起きるからです。
脳振とうを起こしたら、専門医に診てもらうこと、頭痛などがなくなるまで十分休むこと、症状が消失してからも段階的に復帰することが重要です。
例えば、ウォーキング→ランニング→頭への負担のないトレーニング→専門医によるメディカルチェック→頭への衝撃を伴うトレーニング→競技復帰とし、各段階の間に24時間以上の間隔を入れることが必要です。
また、一度だけの脳振とうで後遺症が残ることは稀ですが、繰り返すと、認知機能や平衡感覚が障害され回復しなくなることがあります。また、数年~数十年後に、怒りやすくなるなどの性格の変化、認知症が表れることが知られています。
日本臨床スポーツ医学会による「頭部外傷10か条の提言(第2版)」は、スポーツ選手、コーチ、ご家族のために分かりやすく書かれています。是非、ご一読ください。